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※ちょっとしたお話

【026:アリバイ】1:37 2007/10/02

「なるほど君」
「うん?」
「ぼーっとしてないで仕事しようよ、なるほど君」
「え、してるだろ。仕事」
「してないよ、ホラ」
とん、とお茶を机の上に置きながら真宵ちゃんが大きく溜息を吐く。
かつては千尋さんが愛用していたその机の上には膨大な資料が所狭しとうず高く積まれている。
「あたしがさっきお茶を入れたのは2時間前。その間頼まれた裁判所への書類は提出済み。ついでにお茶菓子とか買ってきたし、書類もファイリングは終わってるの」
「へえ、真宵ちゃん凄いね」
「片やなるほど君。その書類、さっきも見てたよね?」
「へ? イヤイヤイヤ、コレは違う書類――」
「ストッキングで絞殺なんてそんな珍しい案件がちょくちょくあるの?」
「あるかもしれないだろ、世の中広いんだし」
「被害者が全身タイツでも?」
「劇団員だからしょうがないだろ」
「被告人が落語家で?」
「うっ」
そこまでしっかり見てたのか、真宵ちゃん。
予想だにしない反証に、僕は思わず言葉に詰まった。
「なーるーほーどー君ッ」
「うう、分かったよ。やるよ、仕事やりますから許してくださいこの通り」
パンッ、と顔の前で手を合わせて頭を下げる。
腕組みをして横を向いていた真宵ちゃんがちらりとこちらを見た気配がした。
「もうっ、いっつもそうなんだから。じゃあ、最低でも今日中にこの列は終わらせてよね」
「ええっ、この量は無理だろっ」
「言い訳しないのっ」
男でしょ、なんて言われたら言い返す術もなく。
僕って弱いよなあ。
「ほらほら、どうせロクな事考えないで仕事仕事。夜にミツルギ検事と約束してるんでしょ?」
真宵ちゃんにせっつかれて、僕は今日の悩み事をズバリと言い当てられる。読心術でも使ってるんだろうか。イヤイヤ、霊媒だから無理だろ。でも真宵ちゃんだし。
「あのさ、なるほど君」
「な、何?」
「顔に出てるよ、全部」
「ぐっ」
「楽しみなのは分かるから、とりあえず今は仕事してよ」
・・・・・・まあ、そういうこともあるんだろう。うん。
僕は真宵ちゃんにぎこちない笑みを返しながら、とりあえず仕事に戻ることにしたのだった。


※ナルマヨ。家族ですね。なるほど君は基本的に真宵ちゃんを始め、綾里女性陣には頭があがらないようです。むしろ土下座気味。特に対.春美ちゃんはパパなので、愛娘の頼み事は断れないし、反論もしません。真宵ちゃんとはボケつ、ツッコミつつ。千尋さん相手は土下座どころか五体倒置でもいいと思います。むしろ穴を掘って埋まってしまえよ、なんて思ってます。