【015:雪だるま】10:47 2007/09/12
僕の住んでいた町で、雪が降るなんてそれはもう珍しいもので。
ホワイトクリスマスなんて言葉がとても似合わないような、そんな普通の町で。
だから僕が雪に関しての記憶を辿ると少ないことに気付かされる。
というか、ここ最近の事件に関わる記憶しかない。
「真宵さま、雪。雪ですわっ」
「うん、いっぱい雪だるま作ろうね」
事務所のガラス越しに雪がちらほらと舞っているのが見える。
それを見た少女二人が上機嫌で外に出る支度を始めていた。
僕は何となくくすぐったい気持ちでそれを見ている。
「なるほどくんも一緒に雪だるま作りませんか?」
頬を上気させた小さい方の少女は僕の腕に縋っている。
もう一人の、もうすぐ成人するはずの彼女はニッコリ笑っている。
「たまには運動しないとだらけちゃうからね」
「仕事くらいさせてくれよ、真宵ちゃん」
「息抜きは必要だよ、なるほど君」
外はいつの間にか白く染まっていて。
いつもなら聞こえる喧騒は、雪に呑まれて静寂を保っている。
「ほらほら、早く用意してよ。雪だるま作るんだから」
「大きいのを作りましょう、なるほどくん」
僕は小さく苦笑して、はいはい、と返事をしながら立ち上がった。
※こういう日常話。私自身は雪の降らない地帯出身なので、引っ越してきて初めて雪かきなるものをやりました。というか、マイナス表記の温度計を見た瞬間、死ぬ、と思ってしまいました。だから雪だるま作ったことないんだよね、実は。