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【ただそれだけのこと】


誰のためでもなく。キミのためでもなく。私のためではなく。
では、誰のためなのだろう?

この感情は知らない。
なんと呼べばいいか分からない。
どう説明していいものかも知らない。
では、どうすればキミに伝わるのか。

悔悟の念のような。
執拗に縋りついてしまいたい。
縋りついて謝ってしまいたいような。
要するに何でも良いのだ。
キミと言葉を交わすだけでも構わない。
放っておけば激情に駆られて何を仕出かすか分からない。
そんな己でさえ持て余している感情をキミにぶつけてしまいたい。

「どうすれば良いのだろうか?」
「馬鹿だね」
酔いに任せて成歩堂を押し倒した。
彼はただ笑って私の頬を撫でた。
今まで持っていた缶ビールに熱を奪われたのか、指先はひんやりと冷たい。
「馬鹿だよね、オマエもさ」
カチカチと時計が秒針を刻む音に重ねて、成歩堂はそう言った。
怒るわけでもない。泣くでもなく。
ただ、笑っていた。
「何がオカシイのだ、キサマ」
私は成歩堂の身体を押さえつけるように馬乗りの状態のまま、顔だけを寄せた。距離にして10センチにも満たないその空間が、酷くもどかしい。
「いやだってさ、普通気付くだろ。ソレ」
「何の話だ」
「オマエが僕のこと好きだって話」
「フザケるな」
「ふざけるもんかよ」
ゆるゆると頬を撫でていた手が首筋に移動して、ぐいっと力を込められる。非難の言葉は声になる前に、成歩堂の唇で塞がれた。
半ば不意打ちのソレに私は意識ごと攫われ、与えられる感触にただ欲情する。寄せられた手はするりと流れ、回された腕ががっちりと首を固める。熱を帯びた舌が口内を蹂躙し、荒れた息が鼻息となって抜けた。
熱い、と考える脳は朦朧と揺らぐ。
このまま溶けてしまえたのならどれほど幸せなのだろうなどと普段は考えも付かない、そんな甘ったるい思考が脳裏に過ぎていく。
やがてそっと離された唇に唾液が落ちる。濡れているのは唇ばかりではない。
「で、どうなのさ」
「どう、とは?」
「嫌だった?」
「それは」
にっこりと微笑んだ彼の表情に眩暈さえ覚えながら、私は揺らいでいる。
鼓動が早い。チカチカと明滅を繰り返す視界が鬱陶しい。
ただ彼の炯々と光る黒目がちなその目に溺れてしまいたい。
「なるほどう」
鼻先さえ触れるような近距離で私は彼の名を呼ぶ。
もはや声音さえ己の自由にはならない。
視界には彼しか映らない。
「私は、キミが、好きだ」
切れ切れの息のまま、私は彼の耳に弱い告白を落としていく。
今更知らないなどと言えない。そんな甘えた告白だ。
「御剣」
僕もキミのことが好きだよ。
彼は小さく囁いて、舞い上がる私にもう一度口付けをくれた。

※一番最初の文章が書きたかっただけの話。それもどうなのよってな感じですが。というか、内容と関係ないよ。いつものことだよ。

22:02 2007/10/20

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