朝起きたらキミは居なくて。
僕は一人で手で虚空を掴んでいて。
あんまりに寒々しい部屋の空気に。
ただただ一人ぼんやりとしていた。
***
始発の電車に乗った。
席はガラガラで、時折ぽつんと人影が見える。
朝の寒々しい空気に身を震わせながら、私はホームに飛び込んだ車両に暖を求めて滑り込む。
繰り返されるアナウンスに耳を傾けるものはいない。
それでも交わされる車掌と駅員のルーティンワーク。
間の抜けた音の次はベルの音。
やがて電車は動き出す。
私はドア横の端の席に腰を下ろした。
惰眠を求める脳髄に一晩越しの疲労と鈍痛。
ピクリと眉を顰めてみても、ソレを笑う男は居ない。
ガタンゴトンと僅かな振動。
何も言わずに出てきたのを多少申し訳なく思いつつ、それでも分かってくれるだろうと大きく溜息を吐いた。
ガタンゴトンとレールを走る。
カーブに掛かるブレーキ音。
目的地まではまだ遠い。
***
朝が早いとは言っていたけれど、まさか始発で行くとは思わなかった。
所在なさげなこの手が侘しい。
ぐしゃぐしゃのシーツの上で胡坐をかいて、薄明るい外を見る。
ぼさぼさの髪を掻き毟る。
半開きのカーテンからは朝日が申し訳なさげに顔を見せいて。
ぐったりとした朝帰りのホストや足早に過ぎていく新聞配達員を照らしていた。
***
官公庁の朝は遅い。
それでも早番の者たちが一段飛ばしで駅の階段を上がっていく。
急かされている訳でもないのに何故だろうかと考えるものの、自分もその一人なのだから答えようが無い。
半地下の駅から脱出すると、キンと冷え切った外気が頬に当たった。
はあ、と緩い吐息は白く染まり、そのまま消えた。
***
温もりなどとっくに消えうせた布団の中に潜り込む。
確かにココに居たのに。
確かにココで抱いたのに。
冷え切ってるのは空気だけじゃない。
瞼を閉じて昨夜の浮かれた熱を思い出す。
掴もうと手を伸ばす。
けれど触れるのは冷たいシーツ。
温もりが欲しくて己を抱いた。
空しいままに眠りに付いた。
***
IDカードを通して、局へ入る。
過剰に掛けられた暖房が冷えた身体を強かに責めた。
エレベーターホール横の階段を上り始め、ぼんやりと昨日のことを思い出す。
あの浮かれた熱は何だったのだろう、と。
そっと触れる手すりは僅かな熱までも奪うほど、冷たく、鋭利だった。
※お互いの朝。秋〜冬の話。もう少ししっとりと書きたいのですが、現在ネガティブ絶好調なので酷いものです。うう、馬鹿話を書かねば。
23:19 2007/10/11