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【×××の秋3】
〜食欲編・その3〜


秋だ。
秋といえば食欲の秋。食欲と言えば真宵ちゃん。真宵ちゃんといえばトノサマン。トノサマンといえば。
「ふむ、コレは素晴らしいな」
「ですよねー。ケーキなのにココまで再現してるんですよ、ミツルギ検事」
「ほうっ。袴の裾から見える着物の柄まで着色してるのか。ウム、コレは芸術作品と言っても過言ではないな」
トノサマンといえば御剣。
ということで、出張から戻ってきた御剣は真宵ちゃんに呼び出されて何故かココ――成歩堂法律事務所に居た。
「しかし惜しいのはこの槍の穂先だな」
「えっ、どこがですか? あたしは凄いと思いましたけど」
「ウム。形は見事な柳葉状に作られているのだが、本当はもう少しココが尖っているのだ。後は髷の部分だな。どうやらチョコクリームらしいが、茶色いのが玉に瑕だ」
「あ、ホントだ。さっすがミツルギ検事ですねっ」
正直僕には付いていけない会話を繰り広げながら、真宵ちゃんと御剣は嬉しそうに話をしている。
そう、丁度2週間前に始まったケーキフェアは今日の午後5時を持って無事終了。そして前々から話を付けてあった等身大トノサマンケーキは僕の財布の虎の子と引き換えにこの事務所にやってきたのだった。
「って言うかさあ、何で僕がお金出してるんだよ」
欲しいのは真宵ちゃんだろ。と、心の中でぼやきつつ僕は溜息を吐いている。
一応、ホテルの人曰く、『スポンジはブランデーを大量に使ったフルーツケーキだから1ヶ月くらいは平気だし、クリームはバタークリームだから1週間は平気だね』とのたまってくれた。
1週間ってフェアの間持たないですよね、と尋ねると『ああ、1号はとっくに従業員皆で食べちゃったよ。アレは頼まれて昨日作ったものなんだ』と実に嬉しそうに答えてくれた。だから、要するにあのケーキは危惧していたこととは裏腹に、全然平気で食べれるものなんだということらしい。
常温だとキケンだから冷蔵にしてね、と言われたもののあんなデカイ代物を片付けられるような冷蔵施設は事務所に無い。というか、普通は無い。
なので、今日中に食べてしまおう、ということで真宵ちゃんは手当たり次第に電話を掛けまくったのだった。
「で、真宵ちゃん。皆には何時に集合って言ったの?」
僕が問いかけると、話に夢中だった真宵ちゃんがくるりと振り向いた。
「ん〜、一応6時集合って伝えたんだけど。来るかなあ?」
万が一来なくても真宵ちゃん一人なら食べれるだろ、と僕のツッコミ魂が訴えている。
「クリームの付いている箇所だけ食べれば良かろう。アルコールの入った土台部分ならば常温でも意外と持つからな」
「へえ、色々詳しいんですね」
「ム、このくらいは常識かと思ったが」
まあ、オマエは甘いの好きだしね。
「イトノコさんに分けてあげれば喜びそうなんだけどなあ」
「うん、もちろん連絡したよ。あと、マコさんとかヤッパリさんにナツミさんでしょ。ニボシさんにキリオさん、それから冥さんも呼んだからね」
「ほう、アレが来ると言ったのか?」
「ちょっと嬉しそうでしたよ、冥さん」
ちょっとしたパーティーになりそうな面々だ。というか、多分確実に呑み会になるんだろうな。その人選。
今日も仕事にならないことを嘆きつつ、嬉々としてトノサマンケーキを褒め称える真宵ちゃんと御剣を横目に、僕は深々と溜息を吐いた。


※ケーキ三部作・完。というかココで一応終わっとく。ちゃんと連絡を貰った御剣はデジカメ持参でしっかりちゃっかりデータ保存。水木コレクションならぬ御剣コレクション。自宅の書斎の一角は確実にトノサマンだと信じたい。
そして、なぜか頭の中でエンドレスに流れていたBGMが『大江戸捜査網』だったと言うことをココに白状いたします。何でだよ。

22:07 2007/10/08

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