夜の御剣はちょっと積極的だ。 普段なら絶対言わないようなことを口に出したり、しないような事をするから、たまにドキドキしてしまう。本人に自覚は無いようだから更に性質が悪い。だからって言ったところで気付かない。いや、気付いて欲しいとかそういうことじゃないんだけど。何ていうか、ヘタに教えてしまうと自粛しちゃいそうだし。そうすると僕が困っちゃうわけだし。 「成歩堂」 そう思ってると呼びかけられた。声音が少し眠そうで、隙があって堪らない。でも今襲ったら確実に報復されるので止めておく。というか、僕の方が違う意味で床に眠らされる羽目になるからやらない。 「うん?」 「明日は仕事、だったか」 「そうだね、ちょっと平日来れないお客さんでさ。一応、午前中で終わる予定だよ」 「そうか。それならば………いや、何でもない」 「本当に?」 「何でもないと言っているのだ。キミが気にすることは、ない」 だからその、目を伏せて顔を逸らすの反則なんですけど。 「何だよ。途中で止められると気になるだろ。言いたいことあるなら言えばいいじゃんか」 僕がそう言うと、腕を押さえて顔を背けてる。そんなに言いたくない事なのだろうか。まあ、変な所でプライド高いしな。 「いいよ、もう言わなくても。明日朝早いしさ。おやすみ」 何だかなあ。もういいや。僕はくるりと寝返りを打って、御剣に背を向けた。目を閉じて深呼吸を繰り返す。睡魔が瞼を押さえつけて、うつらうつらと意識が切れていく。 と。 「な、なななな何するんだよ」 背中から抱きしめられて思わず目を開けた。肩越しに振り返ると髪の毛が鼻先に触れた。どうやら僕の背中に顔を押し付けてるようだ。 「御剣?」 「………キミは、そのようなアレは……イヤか?」 布越しに伝わってくる熱い吐息。うわ、もしかしてもしかしなくてもそういうことか。ちょっとちょっと、声まで色っぽいんだけど。 「あ、アレって何だよ?」 「キサマ、言わせるつもりか」 パジャマをぎゅうと握り締める感触が伝わる。コレは、うん。きっとそうに違いない。 「いいの?」 「先程からそう言っている」 ぐるりと振り向くと顔を真っ赤に染めた御剣と目が合った。 ううん、つくづく焦れったいと言うかコイツらしい言い回しだよなあ。 「ま、明日もあるから程々にしとくよ」 「キミにそんなことが出来るものか、ハッタリ弁護士」 「うわ、そういうこと言うなよ」 くすくす笑いながら、ゆっくりと首に腕を回した。 「でも、そういうのが好きなんだろ?」 「……勝手に想像したまえ」 緩く上げた口元にキスを落として、とりあえず僕はオイシクいただくことにした。 ※結局馬鹿二人。ううん、馬鹿二人。やはりツンデレは萌える。 |