検事局を訪れたのは午後3時過ぎのこと。
糸鋸刑事に借りていた資料を返しがてら、御剣の顔を見ようとふと思い立って足を運んだ。
仏頂面の親友は、人の仕事を邪魔しに来たのかとブツブツ文句を言いながらもオマエ3時なんだから一休みくらいしろよなんて笑いながら言った言葉に、そうするかと嫌味に笑って出迎えてくれた。
同室で資料整理していた事務官も誘って、まったりと紅茶を飲んでいて。その穏やかな空気が乱されたのが3時半も回ったところ。
「み、御剣検事、ご協力お願いしますッ」
事件です。と、警官らしき人物はそう言った。
後で埋め合わせはしよう、と御剣は言って足早に去る。
なにやらバタバタし始めた検事局内に居心地が悪くなって辞したのが4時ごろ。
事務所に戻ると、大変だよっと真宵ちゃんが駆け寄ってきた。
「大変だよ、なるほど君ッ」
「な、何だよ急に」
「テレビッ。テレビ見るッ、ほらほら」
ぐいぐいと背中を押されて、ソファ横のテレビを見る。と。
『―――の事件の容疑者として、矢張政志氏が先程緊急逮捕されました』
「な」
何だってぇぇぇ、と思わずテレビを両手で押さえて、叫んでいた。
午後5時15分。
真宵ちゃんと一緒に留置所へ訪れた。目の前には顔面蒼白で泣いている男が居る。
「オマエ、また捕まったのか」
「成歩堂ぉ、オレやってねえよぉ」
「分かってるよ。というか、オマエいい加減トラブルに巻き込まれすぎだぞ」
「うるせ、うるせぇぇ。今回だってサトミが別れるとか言わなければよぉ。ちょっとユウコと会ってたくらいで別れてやるとか言い出してさ。何だよ、オレそこまで魅力ないのかよ。ユウコはただの女友達って言っても信じてくれねえし。アヤコとの関係だって――」
「待て待て待て。話ずれてないか?」
「ちくしょー、サトミのヤツ。死んでやるぞぉぉ」
「や、ヤッパリさん?」
いつかと同じような台詞を吐きながら、矢張が意気込んでいる。
はあ、と溜息を吐くと真宵ちゃんがうう、と唸りながら話しかけてきた。
「な、なるほど君。ヤッパリさんって?」
「また、誤認みたいだね」
死んでやるぞぉぉ、と暴れ始めた矢張を警官が取り押さえるのを見て、僕はもう一度溜息を吐いた。
※長編序章と思いきや。気力が萎えたよ。
22:11 2007/08/23