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【つめたい人】


私の恋人はとても優しい。
ベタベタとくっついてくるのは時折鬱陶しいとも思うものの、それでも少し嬉しくないでもない。風貌は冴えないが、まあ強いてあげるならハッキリとした輪郭が男らしい。正直その髪型は如何なものかと思ったりするが、いやこれは僕のトレードマークだから、と言われたのでそういう事にしておいた。
彼の職業は弁護士だ。あまりに突飛な裁判で法廷荒らしと言われている。
胸元に輝くのはヒマワリを模した、柔らかい輝きを伴うバッジ。
しかし、それが彼によく似合うと思えるのは私の見間違いに違いない。
「御剣ー」
少し甲高いけれどよく通る声。
声にさえ温かみを乗せられるのは器用だなと私は思う。
「何の用だ」
振り向くと見慣れた顔。
黙っていれば精悍なのに、相好を崩してヘラヘラ笑っている。
しかし。
「仕事終わったんだろ。だったら呑みにいこうよ」
「ム、しかしソレは良いがキミの方は終わったのか?」
「終わらなきゃ誘わないだろ」
「そうか、ならば付き合うことにしよう」
黒目がちの目で真っ直ぐに見据えられると、何も言えずに従ってしまう。
「何を考えてるのか分からんが、そのニヤけた顔は止めたまえ。成歩堂」
眸の奥に隠した光が有無を言わせぬ力を持つ。
法廷でも向けるその視線は、それでも熱を感じさせない冷たさを帯びている。
「何って、御剣の事だよ」
「ならば尚更、表情を引き締めておくのだな」
「えへへ、キスしてもいい?」
その笑顔に隠された、ふてぶてしさに欲情する。
「キサマ、馬鹿だろう」
「うん」
心底嬉しそうな顔を見て、私は小さく嘆息する。そしてゆっくり頷いた。
柱の影に隠れて、触れるだけのキスをする。
「後で責任は取ってもらうぞ」
「喜んで」
彼は冷たさの伴う笑みを浮かべて、もう一度口唇を重ねた。

※【やさしい人】御剣ver。何だかんだ惚れてます御剣、ってゆう。

7:54 2007/08/10

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