資料室には書類以外にも証拠品が様々に並べられている。 それは裁判のときに提出された大事な代物で、それこそ重要そうなものからそうでないものまで様々にある。 僕は昔のある事件――それこそ迷宮入りしたやつだ――の資料を見ていた。それは一本のDVDで、残された画像にはひどく生々しい殺人シーンが映されている。恐らく犯人が映しただろうソレは警察署内でも『アレは止めといた方がいいよ』と止められるほどエグイものだった。 カニバリズム、というのがどういう心理から引き起こされるのかは知らないが、とにかくその事件はそういったものだったように思う。被害者が映像の中で次々に解体されていき、最終的には人の形を持ったものは骨だけで晒される。流した血さえも丁寧にビニールに注がれていき、パーツごとにラップで包まれた姿がは何とも滑稽に見えた。 確かにコレはそこらのホラー映画よりも怖いだろう。ミュートにしていても、映像から予想される音が勝手に脳内で補填してしまう。そんな、代物だった。 「アンタも趣味が悪いッスな」 イトノコ刑事が顔を顰めながら、コーヒーを持ってきてくれた。僕はどうも、と言いながらソレを受け取り、一口啜る。苦々しい味が口内に広がり、オーバーロードしかけた脳を蹴り飛ばしてくれた。 「でも、今回はコレが多分重要になるんですよ」 「自分も分かってるッス――が、見る気にはならねッス」 再び引き起こされた事件は被害者の外見から殺害方法までドコを取ってもソックリだった。捜査班の中でもやはりコレは再犯なのだろうという意見が強い。 「やっぱり今回の被疑者の仕業には見えませんね。年齢の割に手際が良すぎる」 「―――誤認ッスか?」 「多分」 「御剣検事も同じコトを言ってたッス」 「御剣が?」 「アンタら似た者同士ッスよ」 イトノコ刑事は、はあ、と溜息を付いていつの間にかブラックアウトしたテレビをプツンと切った。 「じゃあ、コレは参考資料ということで少し借りますね」 「重要な証拠品ッスからくれぐれもなくしちゃダメッスよ」 「分かってますよ」 僕は警察署を辞して、事務所へと戻る。鞄の中には先程のDVD。真宵ちゃんだけには絶対見せないようにしなきゃと僕は思った。 ※ちょいアレな話。まあ、そういう話もあるでしょう。 12:57 2007/08/18
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