目が覚めたのは、まだ外の闇が残る時間で。 静かな夜気に紛れた吐息は、生温く溶けた。 眠れない。 いい加減寝てしまえば楽になれるものの、パッチリと醒めた頭は眠ることを拒否している。大口を開けて欠伸をしながら、伸びをする。凝り過ぎた肩が痛みを訴えてたがどうにもならない。 「えーっと」 もう一度ふわあ、と欠伸をする。 時計を見れば3が三つ並んで何となく得した気分。とはいえ、まだ朝は遠い。 「どうしようかな……」 以前似たような状況の時はぼんやりと窓を見てたら御剣がやって来て、まあとりあえず朝どころか昼過ぎまでアレやソレな感じにはなったのだけど、今日は日曜日――いや、日付は越えてるから月曜日だからそんなことは期待できない。 だから、一人であることを持て余してる。 冷蔵庫から麦茶を取り出して、コップに注いだ。ほとんど一息で飲み干したことに咽喉が渇いていたのだと今更気付く。 「何だかなあ」 半端な時間に目覚めるとどうしても余計なことしか考えない。特に仕事で忙しくてここの所なかなか会う機会さえ作れない、恋人のことを。 もう一度コップに液体を満たし、今度はゆっくりと口付ける。 パッパーッ、とクラクションが鳴る。思わず窓際に走ってカーテン越しに外を見ても、やっぱり誰も居やしない。期待してるなんてバカみたいだ。 と、携帯電話が着信を告げる。こんな時間に電話してくるなんて誰だろう。矢張かな。ろくに画面も見ずに通話ボタンを押して、僕は電話に出た。 「もしもし」 「――寝てるかと思ったが」 「え、っと。御剣?」 「他に誰がいるのだ」 予想外の人物でしばし思考が停止する。時計はいつの間にか4時を回っている。 「寝てる相手に電話するなよ」 「しかし起きてたのだろう?」 苦笑する声が電話口に洩れる。ああ、こういうヤツだ。 「何かあったの?」 「キミの声が聞きたかった」 それだけだ、と言い捨てて御剣は電話を切ろうとする。 「ちょ、ちょっと待てって」 「何だ。キミは寝てたのだろう。邪魔して悪かったな」 「邪魔なわけないだろ。………眠れなくて起きてたよ」 じわりと滲みる何かに僕は胸を痛めた。ソレはもどかしく疼くように凝っている。 「仕事は何時からだ」 「うん? まあいつも10時くらいかな」 「では余裕があるな。少し待ちたまえ」 「え、何、どういうこと」 今からソチラへ向かう。 そう言って電話は切れた。 ツーツーという空しい発信音だけが耳に飛び込んでくる。呆然と電話を見ていたけれど、ハッと気付くように僕はベッドに座りこんだ。 ※クラクション続き。まあ、アレだ。御剣だからと言うことで 20:05 2007/08/16
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