誰の代わりとは言わなかった。それでも察したのは身体を交わす間柄か。静かに笑い飛ばしたのはその理由だけではない。 「気にしないよ」 呆気にとられたこちらを軽く受け流し、そう言った。すまない、と取って付けたような言葉を吐き、黙って首を振る。言い訳を止められて尚、言いくるめることを考え続け。 「言っちゃダメだよ、御剣」 言葉に紡がれた思考は四散する。罪悪感と訪れる最悪な理性。 伸ばしかけた腕を下ろし、僅かに距離を保つ。今、触れれば確実に払い除けられることだろう。 熱を欲して止まない身体を無理に引き剥がし、薄ら寒い室内に身を震わす。 ちらつく視界に安堵を求めて、ゆらゆらと傾いだ。 「何故だ」 「ダメだから」 耳鳴りが酷く、変則的に痛む頭。眼前まで寄せられた気配に煩わしさを感じる。 「成歩堂」 寄るな、と伸ばした腕を取られ、引き寄せられた。 「余計なこと考えたらダメだってば」 瞼までせり寄る脈動が次第に早まっていく。何を、求めるのか。どうでもよいようなことばかり考える。 感覚で掴む偽物の思考。 「僕はキミのこと好きだけど、キミは僕のこと好きじゃないんだろ?」 ソレでもいいんだ、と呟く言葉に僅かに強張った。 ぎゅう、と抱きしめられ、隙間が消える。冷えた肌を熱が埋めていく。 「私…は……」 「言わなくていいよ」 ピシャリと遮られて口を噤む。しっとりと汗ばんだ肌がゆっくりと離れていった。 ※ナル→ミツ話。なんか御剣が痛いなあ。 12:54 2007/08/18
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