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【その温もり】


「仕事などあるのか?」
「分かんないよ。でもまあ、どうにかなるんじゃないかな」
「子供を抱えた無職が言っても説得力は皆無だな」
「まあ、それなりにアテがあるからさ」
「……キミがあの店で違法なことをしていると情報があった」
「ただのポーカーだよ。賭け事じゃない、ね」
「ただの、ではないのだろう」
「どこまで知ってるの?」
「詳しい事情は知らんが、妙齢の人妻がよく出入りしているとは聞いた。それも複数人の」
「あははっ、そこまで知ってれば十分だよ」
「笑い事か?」
「オマエこそ。嫉妬か、御剣」
「下らんコトをぬかすな」
「下らなくなんてないさ」
「キサマ、本当なのだな」
「概ね正解だよ、検事殿。キミの想像通りだと思うよ」
「何故だ?」
「何故って、そりゃお金を稼ぐためだよ」
「何故、私に相談しなかったのだ」
「オマエに言ったって反対されるのが目に見えてるからね。だから言わなかったんだ」
「キミは――ッ。みぬきクンはどうするつもりなのだ」
「どうもこうもしないよ。今までどおりの生活が続くんだ。悪く無いだろ?」
「黙っているのだな」
「感づいてはいるみたいだけど何も言わないね。まあ親子って言っても隠し事のひとつやふたつはあるもんだし」
「だから私にも隠したのだな」
「オマエは案外嫉妬深いからね」
「………幾らだ?」
「ん?」
「幾らで買われてるのだ、キサマは」
「んー、大体一回2、3万で月5、6回くらいかな」
「30出す。キミの身体を私が買おう」
「ソレって冗談?」
「冗談に聞こえたか?」
「まあ、ね。で、条件は何でしょうか、御剣検事」
「畏まったフリは止せ。……私以外の客は取るな。それだけだ」
「客じゃなければいいの?」
「言葉遊びをするつもりは無い。それともキサマは客以外で女を抱くつもりか?」
「真に受けるなよ。……いいよ、その条件で呑もう」
「そうか」
「で、今から契約開始なんだろ?」
「――ああ」
「僕はキミに抱かれればいいの? それとも僕が抱けばいいの?」
「今更――」
「うん?」
「今更、そんなことを聞くつもりか。成歩堂」
「うわ、ちょ、ちょっと泣くのは止せって御剣」
「キミが……」
「悪かったよ。僕が悪かったって。ゴメン、謝るから。許してよ、ね、御剣」
「弁護士でないキミなど見たくなかったッ」
「本当にゴメン。勝手に決めちゃってさ。だから泣くのは止めてよ、ねえ」
「う、う……」
「僕の代わりに泣いてるの?」
「そんな……うぐっ……ことは………」
御剣の背中をやさしく撫でながら、僕はその肩口に顔を埋める。
身体が震えて、眦から流れる雫が僕のパーカーを色濃く染めていた。
「ゴメンね」
嗚咽だけが零れる室内で僕らはただ抱き合っている。
泣いた子をあやすように手を動かしながら、ゆっくりと目を閉じた。

※やべ、御剣泣かせちゃった。

23:27 2007/08/12

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