昼寝をしてたら御剣が来た。 珍しいこともあるもんだと僕はソファから跳ね起きて、席を譲る。 検事サマは『ム、かたじけない』なんて言いながらソファに座った。 僕はのろのろと簡易キッチンへ足を向けて、コーヒーメーカーに置きっぱなしのすっかり冷えたヤツをカップに注ぐ。香りは大分飛んでしまっているが、多分文句は言わないだろう。そもそも熱いコーヒーは飲めないだろうし。 シロップを探したけれど切れてることに気付く。そういえば昨日みぬきが騒いでたような気もする。 仕方ないのでコンデンスミルクをトレーに乗せて、僕はソファに戻った。 「シロップ切れてるんだけどさ、使う?」 「ム」 「砂糖じゃ溶けないし。まあベトナムコーヒーとでも思ってもらえば」 「仕方あるまい。貰おう」 目の前の男、御剣怜侍は甘党だ。 紅茶を好むのもケーキが好きだからというれっきとした理由がある。 そもそも紅茶はストレートで飲むくせに、コーヒーはカフェ・オ・レか、シロップを入れたものしか呑まない。砂糖じゃないのは猫舌だからだ。『紅茶とコーヒーは違うのだ』とかよく分からない理屈を捏ねられて、結局アイスしか飲めない。しかも、ブラックはニガテなのだ、と最初に宣言されて、シロップを要求されたときはどうしようかと思った。僕から言わせると、カフェ・オ・レはともかくシロップは邪道だと思う。コーヒーは精々ミルクを入れるくらいだ。それだって真宵ちゃんに「ブラックばっかり飲んでたら胃が荒れちゃうよ、なるほど君」と言われたからだという何とも情けない理由だったりするのだけど。 みぬきがカフェ・オ・レを好んで飲むのはこの男の影響だ。僕の言うことはツッコんでくるくせに御剣の言葉には従うので父親としてはちょっと面白くない。 「ちょっと嫉妬しちゃうよなあ」 「何の話だ」 「んー、内緒」 御剣が傍目からでもバレバレなくらい動揺してるのが見てとれる。ブルブルと震えてるのは怒ってるというより動揺してるんだよなあ、と僕は思った。 「成歩堂」 「何?」 「その、私はキミに何かしたのだろうか。随分不機嫌のようだが」 不機嫌と思われてたらしい。 おずおずと聞いてくる様子が可愛らしくて思わず抱きついた。 「オマエさ、いろいろ間違ってるから」 「ム」 「ま、いいや。そういうとこも全部好きだし」 愛しちゃってますから僕、と笑いながら言うと触れた頬が少し熱を帯びた。 ああ、多分これは照れてるんだろうなと僕は幸せに浸る。 「御剣」 名前を呼ぶと顔を赤くしながら振り向いた。目元が少し潤んで見える。 僕は構わず抱きしめて、耳元で囁いた。 「好きだよ、御剣」 ※酒の酔いって怖いよね。ということで酔っ払ってます主に管理人 22:05 2007/06/19
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