【087:根本を揺るがす言葉】18:59 2007/12/15
キミに逢いたい。
キミの声が聞きたい。
キミの肌に触れたい。
キミに、触れたい。
クリスマスパーティをしよう、と言い出したのは真宵ちゃんで。
スポンサーを買って出たのは御剣で。
場所はやっぱり僕の事務所で。
メンバーはいつも通りいつものメンバーを呼ぶことになった。
「ほらほら、なるほど君。クリスマスって言ったらトリだよ、トリ」
「トリって、ローストチキン買ってこいとか言うなよな」
「ちっちっち、甘いなあなるほど君。クリスマスって言ったらやっぱりフライドチキンでしょッ」
「・・・・・・どこの田舎だよ、ソレ」
そう言えばこの間テレビのバラエティで沖縄だか九州だかどこかの家庭ではソレが一般的だとかやってたっけ。米軍基地があるから本場だよ、とかなんだかよく分からないことを真宵ちゃんが言ってたのを僕は思い出す。
「真宵クン、クリスマスで鳥肉と言えば七面鳥が正当なのだよ」
横から御剣が口を出してくる。っていうか、七面鳥なんて何処に行けば手に入るってんだよ、オイ。
「幸い、メイがアメリカから戻ってくると言うのでな、その手配もしておいた」
「やったー、さっすがミツルギ検事。なるほど君とは違いますねッ」
「なるほどくん、みつるぎ検事さまのような気配りが出来ないなんて、真宵さまに嫌われてしまいますよ」
真宵ちゃんが素直に喜ぶ言葉に含まれてる棘だとか、真剣に僕と真宵ちゃんの仲を心配してる春美ちゃんだとか。
「まあ、キミでは無理だろうな。成歩堂」
ニヤニヤしながら僕に話しかける親友だとか。
「うるさいなあ。どうせ僕は甲斐性なしだよ」
「そこまで自虐的になる事はあるまい」
「そうだよ、なるほど君。なるほど君に無いのは甲斐性だけじゃなくてお金も無いんだよ」
真宵ちゃんの悪意の無い笑顔が胸にグサリと突き刺さる。仕方ないだろ、依頼が来ないんだから。
「で、結局誰が来るんだよ。人数多いと事務所に入りきらないぞ」
僕がそう言うと、真宵ちゃんが傍らに置いてあったメモ帳を取ってチェックに入る。
「えーとね、まずヤッパリさんに冥さん、イトノコ刑事さんにマコちゃん、あとニボサブさんはお仕事らしいからパスで、キリオさんは事務所の用があるって言ってたし、でもナツミさんも来れないって言ってたっけ。あとは・・・・・・」
「おいおい、どれだけ声掛けたんだよ」
「え? 一応、今までの依頼人全員かな」
僕はこっそり溜息を吐いて、事務所内を見る。ココじゃ無理っぽいよな、やっぱり。
「真宵ちゃん、そんなに呼んでこの事務所に入ると思う?」
「え? 上でやるんでしょ。違うの?」
ニッコリと笑って上の階を指す真宵ちゃんに僕の表情が固まる。
上の階、すなわち『虎の穴』。
僕にとってはかつての勉強部屋であり、指導部屋であり。
そして、千尋さんに潰された部屋だ。もちろん酒で。
「・・・・・・上を使うのかよ」
「だって広い方がいいじゃない。ほら、クリスマスツリーとかも飾るんだし」
「チャーリーくんにも電飾を施した方が良いのでしょうか、真宵さま」
「あ、それ良いね。なるほどくーん、チャーリー君のさあ」
「うん、もう分かったから」
僕は溜息を吐いて、室内をぐるりと見渡す。
部屋の片隅で小さく笑う御剣に、オマエが全部持てよ、と言って僕はノロノロと買出しメモを作るのだった。
※間を空けると健全ネタになりました。どういうことだ。【097.キミの言葉】へ続きます。せめてそこでどうにかせんと。