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※ちょっとしたお話

【055:一人呟く】17:43 2007/12/09

夢を、見た。
内容は覚えていないけれど、御剣の夢だった。
やるせない憤りがあった。言いようのない怒りがあった。
けれど。
それ以上に僕はキミのことが好きだという事実が、一番物悲しかった。

「・・・・・・ほど君、なるほど君」
ゆさゆさと肩を揺すられて僕は現実に舞い戻る。
ぼやけた視界に映るのは助手であり、副所長である真宵ちゃんだ。
「なるほど君、泣いてるの?」
「うん?」
机に突っ伏してた上半身を上げて、僕は目元に手を当てた。冷たい感触が指先に触れて、ソレが涙だと気付くまでに少しだけ時間が掛かる。
「調子悪いならちょっと早いけど閉めようよ」
「ああ、うん。ゴメン。心配いらないから」
「そう? 顔色も悪いよ」
「大丈夫だよ、最近寝不足でさ」
口から零れる言葉は何なのだろう。思ってもいないことがすらすらと出てくるのは職業病なのかもしれないとも思う。
「でもさ、最近なるほど君疲れてるみたいだから心配なんだよね」
真宵ちゃんが心底不安そうに僕の顔を覗き込む。
「無理しないでよ、なるほど君」
その表情と声音が千尋さんを髣髴とさせて、姉妹だな、と僕は思った。
「うん、ありがとう。僕はもう少し残って仕事するから、真宵ちゃんは先に帰りなよ」
僕は精一杯の虚勢を張って、無理矢理笑顔を作った。千尋さんなら絶対見抜くソレも真宵ちゃんにはまだまだ通用するようだ。
「なるほど君、本当に大丈夫?」
「大丈夫だって言ってるだろ。そうだ、今度の公判終わったらラーメン食べに行くかな」
「うん、そうだね。絶対勝ってよね、なるほど君」
「勝ったらおかわり自由で奢ってあげるよ」
「うんっ」
パタパタと帰り支度を始める真宵ちゃんに僕は小さく手を振りながら、僕は申し訳ないようなありがたいような気持ちになって、小さくゴメンと呟いた。


※御剣失踪中。なるほど君、自覚済み。という設定。タチミサーカスの辺りかな。なるほど君は逆境には強いはずですが、御剣さんが絡んだ途端に弱くなりそうです。