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※ちょっとしたお話

【051:霧霞】7:38 2007/10/26

空が霞んでよく見えない。
靄のようにゆらゆらと白い霧が揺れている。
雲の中を歩いているようだった。手を伸ばしても掴める筈も無い。
「珍しいよね」
「そうだな」
湿度があるためかあまり寒いとは思わない。
それとも成歩堂が後ろから私を抱きしめてるから暖かいのかもしれない。
「私はあまり好かない」
「そう?」
「あの事件を思い出すからな」
「ああそっか」
時期は違えども、同じ場所、同じ気候ではやはり思い出してしまう。
「僕は好きだよ」
「何故だ」
「だってオマエに抱きつけるから」
「馬鹿か、キミは」
「馬鹿だよねえ、僕も」
クスクスと笑う男に私は溜息を投げながら、湖を見ている。湖面すらマトモに見えない霧模様では、他に歩く人も居ない。
「良いんだよ、それで。僕はキミの傍に居るだけでいい」
耳元でそっと囁かれて、私は思わず身動ぎする。
恥ずかしい男だとは思っていたけれどまさかここまでとは思わない。
しかもそんな男に惚れている自分も昔の自分が見たら信じられないと嘆くのだろう。
「ねえ、キスしようよ」
誰も見てないから、と微笑まれて顔を寄せられる。
「矢張が居るぞ」
「売店は反対側だろ。バレないよ」
「あの騒がしい女性が相変わらずカメラをセットしてるかもしれないな」
「写真取られたらスクープだよね」
「襲われたと証言しよう」
「えー、合意だろ?」
目を覗き込むように成歩堂が笑う。
「誰も見てないから、さ」
近づいた唇を甘受して、私はゆっくり目を閉じた。

※甘ったるい話になりました。どうしたんだ。何があったんだ。書きながら1−4が霧だったな、と思い出しました。ソレもどうかと思うぜ、自分。