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※ちょっとしたお話

【094:クスリ】22:30 2007/07/30

昼と夜の気温差のためか、珍しく体調を崩した。
咽喉が痛く、寒気が止まない。
どうやら風邪らしい、と気付いたのは無駄に熱い額に触れてからだ。
自覚すると症状も重くなる。
私は帰りにたまたま寄った成歩堂法律事務所のソファでぐったりと項垂れてしまい、助手である少女やその従姉妹に大いに心配されてしまった。
問題ない、とは言ったがどれほど信じてくれるのだろう。
多分、赤か青かは分からないが顔色が優れずに、横たわり浅い息を繰り返す男の台詞を。
「ミツルギ検事、寝ててもいいですよ。クスリとか買ってきましょうか?」
彼女の言葉に私は少し苦笑する。心配してくれるのは分かるが、他人の事務所でうかうかと寝ているわけにもいかない。それも法曹関係の事務所だ。いつ相談したい人が現れるかも分からない。
それでも半ば強制的に、しかし多少の妥協の元に成歩堂のいる所長室で休むことになった。
ソファは少し小さめになるが、文句など言える立場ではない。
「すまない、仕事の邪魔になると思うのだが」
「いいってば、気にするなよ。どうせ真宵ちゃんがオマエを無理矢理寝かしつけようとしたんだろ。っていうかオマエ顔色悪いんだから休んでろよ」
「ム、そんなに具合が悪く見えるのだろうか」
「うん」
「そうか。迷惑掛けるな」
「寝てるだけなら別に邪魔にはならないよ。働きすぎだから疲れてるだけだろ」
苦笑する男に私は朦朧とした意識で、スマナイと謝り続ける。
軽く眩暈を覚えて、ドサリ、とソファに崩れた。
革張りの冷えた感触が熱い頬っぺたにはキモチ良い。
「御剣」
ふ、と視界が翳り、目の前に成歩堂が居る。
「おやすみ」
軽く額に口付けされた。まるで子供ではないかと思ったが、気持ちよかったので何も言わなかった。 デスクに戻ったらしい成歩堂がカタカタとキーボードを叩いている。一定の速度を保った音を聞きながら、いつの間にか瞼を下りて、私は眠りについた。

※ああ、眠い。うう、咽喉痛い