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※ちょっとしたお話

【087:モノクローム】17:38 2007/07/24

真宵ちゃんに誘われて、千尋さんの墓参りに行った。
そもそも霊媒で何度も死後の千尋さんを見てたりするのだけど、やはり墓を見るとどこか生々しい。
今でも思い出すのはあの時の場景。
頭から血を流した千尋さんは、怪我さえなければ眠っているように。だけれど僅かに眉間にシワの寄った、切ない表情をしていた。多分、望んだ死ではなかったのだし、思わぬ死でもあったから。
「でもさ、あたしは平気だよ。霊媒って方法があってさ、それでお姉ちゃんに会えるんだから」
数々の悲しみを乗り越えてきた少女は、こちらが痛々しくなるほど朗らかな表情で笑った。
「まだ修行中なんだろ。真宵ちゃん」
「なるほど君、それ嫌味?」
「違うよ。仕事以外で千尋さんに会う機会が作れるってことだろ。ちょっと羨ましいな」
「ううん、お姉ちゃんはそういうところキビシイから呼んでも来てくれないよ」
「そうなんだ」
「うん」
桶に汲んだ水を墓石に掛けてやった。真宵ちゃんが脇でゴシゴシと拭いていく。
「そういえばゴドー――ええと、神乃木さん来るんだよね」
「後で来るとは言ってたよ。他の人と一緒に来たくないんだってさ。まあ、分かるような気がするけどね」
「何で?」
「真宵ちゃんには分からないと思うよ」
彼がどれほどまでに師を引きずっているのかは知らない。
彼がどれほどまでに師を慕っていたのかは知らない。
けれど会話の端々に出てくる彼の言葉には、親しみとか思い出とかはたまた笑い話であったりとか。
僕は彼女を知っている。
僕の師としての彼女を知っている。
僕と彼は彼女の死を挟んで、対立し。
僕と彼は彼女の死を悼んで、この場を訪れる。
彼がどれほど師を好いていたのかは知らない。
彼と彼女の間に転がっていたのは何だろうか。
知らなかったけれど、何となく分かる気がした。
人の死と向き合うということはそれだけ苦痛なことだ。
何度繰り返したところで、慣れることは無い。
「なるほど君のケチ。教えてくれたってイイじゃない」
真宵ちゃんがブツブツと口を尖らせながら、花瓶の花を整えている。
最初会った頃からすれば、随分オトナっぽくなった容姿。
落ち着きが出てきた声音。
黙っていれば本当に、千尋さんにソックリだ。
「真宵ちゃん」
「なあに?」
僕はニッコリと笑って、線香を手渡した。
「僕は用事があるからそろそろ帰るよ。神乃木さんが来たらヨロシク言っといて」
「え、今日は事務所休みって言ってたじゃない」
真宵ちゃんがあたふたと線香を香炉に立てている。
「急ぎの依頼を思い出したんだよ。じゃ、ヨロシクね」
「あ、ちょっとなるほど君っ」
ゆらゆらとたなびく煙を仰いで、僕は踵を返した。

※カミチヒ大好き。ゴドマヨもいいかな、とかちょっと思ってみた