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※ちょっとしたお話

【084:ベッドサイド】7:03 2007/06/27

隣の部屋から小さく息を呑む音が聞こえて、目が覚めた。
僕は思わず飛び起きる。
ソレは小さな呻き声と荒い呼吸。
僕はゆっくりと立ち上がり、開け放たれた寝室のドアをくぐる。
以前もそうだったように。
寝室のベッドに横たわる男は身動ぎひとつしない。
本当に、死んでるみたいだ。
暗闇の中でも更に青白く浮かんで見える顔は酷く顰められている。
瞼がビクビクと動いているのは、多分夢を見ているのだろう。
御剣、と声を掛けた。
歪められた表情はまだ緩まない。
僕はベッドに近づきながら、もう一度彼の名前を呼ぶ。
まだ目が覚めないのだろう。いや、醒めることを拒んでいるのかもしれない。
僕はベッドサイドに腰掛けて、彼の顔を見た。
「御剣ッ」
死体のような姿に思わず零れた涙が顎を伝い、ぽたりと落ちた。
自分で止めることも出来ず、涙腺から次々と溢れてくる。
「なる、ほどう?」
朧気に囁かれた声は随分嗄れている。
僕は存在を確かめるように頬に触れ、首を撫で、肩を掴んだ。
俯くように顔を肩に埋めると、体温が感じられて僕はホッとする。
「なぜ、キサマがここに?」
掠れ声のまま、御剣が呟く。
僕は顔を上げて、彼の顔を覗き込む。
少し苦々しそうな表情の中に戸惑いの色が見える。
「オマエが心配だったからだよ。前も僕が泊まった時に酷く魘されてただろ?」
「そう、だったか?」
うん、と僕は小さく頷いて彼の胸に顔を押し付けた。
流れていた涙が彼の衣服を濡らしていく。
ドクドクと脈打つ動悸が耳に届いて、生きていることを訴えている。
涙は止まっていたのだけど、僕はまだこのままで居たかった。
彼の手が動いて、僕の頭を撫でている。
まるで子供をあやすような手つきだと僕は思った。
「アリガトウ」
彼が小さな声で呟く。照れているような声音が耳をくすぐる。
僕はようやく顔を上げて、笑った。

※【083:リロード】の続き。なるほど君視点。ストーカーチック