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※ちょっとしたお話

【083:リロード】6:35 2007/06/27

ソレが夢だと気付いたのは目が覚めたからに過ぎない。
目を見開いて、ああ夢だったのかと安堵する。
同時に言いようのない不安に陥るのだ。
目を開けてはいるものの、今が現実だという確証はない。
そうだ、いつだって夢は生々しい。
時には痛みを伴うほどに、夢も現実も違いなどない。
だから今この瞬間が果たして私の現実だと言い切れるのだろうかと問われれば、否、と答えるより他はない。
何を信じればいいのか。
起き上がろうと力を込めても身体は動かない。
頭は覚醒しているのに、身体は強張ったままだ。
金縛り、とはこういう状態のことなのだろう。
声もあげることは出来ない。
まだ暗い室内には影が凝っている。
目玉だけを動かして、今が夜中の3時だと知る。
ダメだダメだダメだダメだ。
眠りに落ちることも出来ない。
かといって、起き上がることも出来ない。
夢と現の間で、私はもがいている。
「―――ッ」
声にならない叫びを上げる。
息も詰まって苦しい。
動悸だけは治まらない。
誰も居ない室内に蠢く気配を感じた。
ああとうとう幻覚まで見るようになったのか、と思う。
私は目を閉じた。意識が落ちてしまえば楽になれる。
「みつるぎ」
深とした静寂を打ち破るように声。
コレは幻聴だ。私以外の人間がここにいるはずもない。
「御剣」
聞き覚えのある声は段々と近づいてくる。それは足音さえ伴って。
衣擦れの音が近づいたかと思うと、ギシッ、とベッドが小さく揺れた。
コレは幻覚で幻聴で偽りの感覚。
私は自分を信じてはいけない。
瑕疵だらけの精神が作り出した贋物の世界。
「御剣ッ」
ポタリ、と冷たいものが頬に落ちて私の意識が浮上する。
目を見開くと見慣れた顔がそこにある。
「なる、ほどう?」
掠れた声が咽喉から出た。
若干熱い手のひらがそっと頬に当てられる。
私は動くことが出来ない。
手のひらは私の顔を沿って、首を撫で、肩を掴まれる。
力が込められて痛みさえ覚えた。
私は顔を顰める。
闇に慣れた目に飛び込んできたのは存外近くにある成歩堂の悲痛な表情。
泣いて、いるのか。
「なぜ、キサマがここに?」
「オマエが」
心配だったからだと、彼は言った。
「前も僕が泊まった時に酷く魘されてただろ?」
「そう、だったか?」
うん、と彼は小さく頷いて私の胸に顔を埋めた。
じわり、と滲みる涙が冷たかった。
私は腕を上げて、彼の頭をゆっくり撫でる。
金縛りは解けているようだ。呼吸も正常に戻っている。
動悸も感覚も今はいつもと変わらない。
コレは嘘偽りない確かな、現実。
「アリガトウ」
私が小さな声で呟くと、彼はようやく顔を上げて笑った。

※ミッタンは相変わらず悪夢に悩んでるんだろうなあ。よく考えたら不法侵入だよなあ、成歩堂