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※ちょっとしたお話

【080:ブラックアウト】21:50 2007/07/23

ほんの少しでよかった。
温もりが欲しかった。
捕まえても消えない存在が欲しかった。

ソファにだらしなく放られた手に己の手を乗せる。
男らしい無骨な指と肉厚な手のひらが酷く心地良い。
つくづく感化されているものだと思いながらも、指を絡ませた。
「どうしたの?」
いつの間にか成歩堂がテレビから目を離して、こちらをまじまじと見ていた。
黒目がちの目がくるくると回りながら、ううん、などと唸っている。
「何でもない」
私は構わず指を取って、ぎゅう、と握った。
「痛いよ、御剣」
「そうか」
力を少し緩めたが、手は離さない。
むしろ余計に深く指を差し込んで、手のひらまでもぴったりと合わせた。
「何かあった?」
「気にするな」
頭を垂れて、手の甲に額をつける。触れた先は僅かに冷たくて、気持ちよさに目を閉じた。
「キミの手は、気持ち良いな」
「そう?」
そうかなあ、と呟く声を聞きながら、私は大きく息を吸った。
ああ、成歩堂の匂いがする。
急速に落ちていく意識の中で、成歩堂の声が耳に残った。

『おやすみ、良い夢を』

※眠いよ、眠いんだよ