【079:コール】7:32 2007/06/26
「もしもし」
「成歩堂か。どうした」
「うわ、取った。ゴメン、取らないと思ってた」
「なら電話をするな。メールでも済むことだろう?」
「あ、うん。そうなんだけどさ」
「何かあったのか?」
「何でもないよ。気まぐれだから」
「……そちらは夜中なのだろう」
「そう、だね」
「気まぐれで電話するには遅い時間だと思うが」
「うん、ゴメンね。仕事は終わった?」
「ああ、今帰る途中だな」
「運転中?」
「いや、構わない。今日はタクシーだ」
「そっか」
「キミから電話を寄越すなんて珍しいな。何かあったのか?」
「ん、何でもないよ」
「声が震えてるぞ」
「何でもないってば。ただ」
「ただ?」
「無性にオマエの声が聞きたくてさ」
「成歩堂?」
「ゴメン、本当に何でもないから」
「そうか」
「悪かったな。急に電話なんかして」
「要らぬ気は揉むな。私も、キミの声が聞きたかった」
「うん」
「何があったか知らんが、気を落とすなよ」
「そうするよ」
「ああ、スマナイ。バッテリー切れだ。またこちらから掛けなおす」
「あ、いいよ。そんな気を使わなくても。どうせ気まぐれ、だしさ」
「そうか」
「無駄話ばっかりでゴメンね」
「謝ることはない」
「ありがとう……御剣、僕」
ピーーーーッ
『充電してください』
「成歩堂?」
「僕、もう弁護士じゃないんだって。―――言えなかったな、やっぱり」
※7年前の事件後。ミッタンはこの後知ったということで。