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※ちょっとしたお話

【074:レターボックス】12:48 2007/06/20

今日は久しぶりの休みなので、家の片付けをする。
とりあえず溜まっている洗濯物やら食器なんかを洗って片付け。
外が晴れているので布団も干すことにした。
っていうか、僕すっかり主婦化してないか。
たまにしか休めない恋人は今日も今日とて遅いらしい。
なんだかなあ。
平日にぽっかり休みが出来ると、なんというか困ってしまう。
いや、平日じゃなくてもそうなんだけど。
あ、電話。
取ろうと思って良く見たらメールだった。
着信音を変えればよかろうとかなんとか言われたけど、イマイチ操作が良く分からないのでそのまま。
今のところ設定では真宵ちゃんが着メロをトノサマンに変えたのと、御剣がヒメサマンに変えたくらいだ。一体、僕の携帯電話を何だと思っているのか。
メールは矢張からだった。
飲み会の誘いらしい。というか、コイツの場合はコンパだな。多分。
場所と時間も書かれていて、『よろしく頼むぜ☆』などとある。
御剣遅いって言ってたし、家事もほとんど終わってるし。まあ、たまには付き合ってやろう。
返信しようと思っていたら電話が掛かってきた。真宵ちゃんだ。
「もしもし」
「あ、なるほど君。あたしあたし」
「どうしたの、真宵ちゃん」
「んーとね、今日事務所行ったら休みだったからどうしたのかなーって思って」
「……昨日、休むって言ったじゃないか。だから倉院の里に戻ったんだろ?」
「いっやー、修行が厳しくてねー。春美ちゃんにちょっと出かけてくるって言って出てきたんだよ」
「ちょっとの距離じゃないだろ、真宵ちゃん」
「うーん。いつも通ってるから慣れちゃったのかなー。あたしにとってはそんなに遠くないんだけどさ」
僕は思わず心の中で遠いよ、とツッコんでいた。さすが真宵ちゃんだ。僕にとってあの距離はちょっとした小旅行だ。
「じゃあいいや。ついでだからミツルギ検事のところに行ってくるよ」
「アイツ仕事中だと思うけど」
「んー、じゃあ一緒にお茶でもしてくるね」
「いいのかなあ」
「いいのいいの。ほら、よく言うでしょ。忙しいときほど休まなきゃって」
「何か違うと僕は思うぞ」
「もう、なるほど君はミツルギ検事のことが心配じゃないの? 絶対、仕事仕事で疲れてるからさ。この真宵ちゃんが直々にトノサマントークに花を咲かせようって魂胆じゃない」
「そっちが目的だろっ。まあ、御剣のヤツも放っておくと仕事しかしないからなあ。真宵ちゃんが行って息抜きになればいいと思うよ」
「うん、じゃあナルホド君は今日一日しっかり休んで、また明日から頑張らなきゃね」
「あのさ、真宵ちゃん」
「ん、あたし何か言った?」
「『仕事が立て続けにありすぎて少しは休みたい』って真宵ちゃんが言うから明後日まで休みにしたんじゃないか」
「え、そうだったっけ」
「そうだよ。なのに忘れてるし」
あはははは、と誤魔化すような笑い声がする。ああ、ヤッパリ忘れてたんだな。
「ゴメンゴメン、じゃあそういうことでシッカリ休むんだよ。ナルホド君」
「うん、もう疲れたからそろそろ切るよ」
「ごめんねー。じゃあ月曜にねー」
ハッピーホリデー、と真宵ちゃんが言いながら電話を切った。
なんだったんだろう。というか、休みにした意味がサッパリ分からない。
僕はぼんやりと外を見て、溜息を吐いた。
陽が翳ってきたな、洗濯物取り込まなきゃ。
布団を取り込んで、洗いざらしのシーツを被せる。
ベッドのマットも干したいよなあ、とか思ったけれどあんまり聞かない話なのでそのままにしている。
布団はほのかに暖かくて思わず突っ伏したくなる。
眠気が襲ってきて、少しだけ寝てしまった。

ヒメサマンのテーマが鳴り響いて、僕は飛び起きた。
御剣からの電話だ。珍しいと思ってぼんやりしていたけれど、取らないと怒られるのでとりあえず出る。
「もしもし」
「ム、声が嗄れてるぞ」
「ちょっと寝てたんだよ」
「そうか」
「まだ仕事中なんだろ。どうしたんだ」
「キミは今日休みだったのだな」
「前に会った時に言ったじゃないか」
「いやスマナイ。忘れていた」
「あっそ。で?」
「ああ、今日は早く帰れることになった」
「珍しいね。何かあったの?」
「……うム、いや、何と説明するべきか」
「何?」
「真宵クンが遊びに来たのだが」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたね」
「彼女は事務所は明後日まで休みだと言ってつい先程帰った」
「うん、それがどうしたの?」
「キミが休みだと知った局内の女性職員に『たまには恋人と過ごすべきです』と口を揃えて詰め寄られたのだよ」
「あー、それは何とも言えないね」
「丁度、一緒に話していた女性職員が口を滑らせたようだ」
「いや、ソレ絶対確信犯だと思うけど。で、それで早く帰れるんだ」
「ウム、というか休みを取らされた。明後日まで」
僕は心の中でその女性職員に感謝する。
「じゃ、早く帰って来いよ。たまには家で一緒に過ごすのもいいだろ。晩飯何でも良いよな。用意しとくから」
「感謝する」
また後で、と僕は電話を切って床に伸びた。
そうだ、矢張に返事。えーと『無理』っと。確定して送信ボタンをポチッと押した。
夕飯何にしよ。あ、そういえば冷蔵庫に豚肉ブロックあったっけ。野菜はセロリ、ナス、人参、玉葱。お、エリンギがある。ジャガイモもあるから。よし、カレーだ。多分ルーはあるな。この前買っといたし。チャツネもあるし、クミン、チリペッパー。まあ適当に作るか。
僕は勢いよく起き上がって、いそいそと戻ってくるだろう恋人のためにカレーの下ごしらえをはじめるのだった。

※一人暮らしじゃ作らないけど、二人暮しなら作る。和食もそうかも。