【058:ミネラルウォーター】20:47 2007/07/24
眠りが浅いのか、夜中に目が覚める。
大抵はそこで微睡んで朝まで寝てしまうのだが、どうやら今日のは違うらしい。
フッと目が覚めた瞬間に意識が覚醒している。いや、意識が覚醒してから瞼を開けているようだ。寝起きにある揺れるような感覚は一切ない。
全てがクリアだった。
深、と張り詰めた空気が鼓膜を圧迫する。真っ暗な室内に靄のような闇が凝っている。首を廻らせて、辺りを見渡す。ドクン、と心臓が酷く鳴った。
「……う、あ、あぁ」
締め付けられる感覚に胸を押さえるが治まらない。胸骨の隙間を縫うように指を突き刺して、痛みで痛みを誤魔化す。背中に不快な汗を感じ、私は思わず目を閉じた。
鋭い痛みは猶も止まない。うずくまるように脚を曲げて、空いた片手で咽喉を押さえる。ひゅう、と抜けた呼気が室内に響いた。浅い息を繰り返す。口内の唾をゴクリと飲んで、私は痛みが引くのを待った。
5分、いや10分ばかりかそのままの格好でぐしゃぐしゃのシーツの上に横たわっている。もしかしたら1時間は経っているのかもしれない。夜中の感覚は酷く曖昧だ。ようやく落ち着いて、私はホッと溜息を吐く。そっと目を開くと強く瞑りすぎた瞼が眼に白闇を見せる。
少し荒れた息を整えながら、私は身体を起こしてベッドサイドに座った。時計を見るとまだ夜中の3時である。頭は冴え渡り、とても眠れそうにない。
仕方あるまい。
一人言ちながら立ち上がり、水を求めてキッチンへと足を運んだ。
※悪夢を見ない夜は苦しくて起きてるだけ