【039:ループ】1:47 2007/08/05
抱きたい衝動があるのは生理学的男性として理解できる。
しかし、しかしだ。
抱かれたいと思うこの感情だけはどう考えてもおかしかろうと私は自分の思考に対して異議を申し立てるのだった。
「というわけなのだが、キミはどう考える?」
「何がどう繋がってそういう思考になるのか僕には分からないんだけど」
「だからキミは『抱かれたい』と思うことがあるかどうかと尋ねているのだ」
「ああ、そういうことかあ」
成歩堂は手元のボールペンをくるくる回しながら、考えている。むぅ、相変わらず変なところで器用な男だ。
「多分、オマエの『抱かれたい』と僕の『抱かれたい』は違うと思うから参考にはならないと思うよ」
「ム、どういうことだ」
「だからさあ、オマエの場合はセックス込みで『抱かれたい』ってことなんだろ?」
「な、な、何を馬鹿なッ」
「で、僕の場合は単純に抱擁――つまり『抱かれたい』――まあ、こんなところかなあ」
そういう意味でなら僕は毎日だよなあ、などとぼやいている。
本当に参考にならない。というか、お話にならない。
この男に聞いた私が馬鹿だったと思いながら、私はカウチに腰掛ける。肘掛に肘を乗せて、頭を抱える。そうだ、この男はそういう男なのだ。何となく理不尽な気持ちにもなったが、相手が成歩堂だと考えると幾分気も楽になる。法廷どころか私生活まで荒らしてどうするつもりだと思ったが、黙っておいた。
「で、オマエは今そういう気分なの?」
「ぬ」
「抱かれたいの?」
「むゥ……」
「抱かれたくないの?」
「わ、私は、その――な、何をする、キサマッ」
急に抱きしめられて、私は思わず身を強張らせる。そうすると、ますます絡んできて動きを封じられた。
「素直になれよ」
にっこりと微笑む目の奥に炯炯と光る雄の目を見出す。私は小さく溜息を吐いて、力を抜いた。抵抗しても逃げられるはずも無い。何より。
「御剣」
私が逃げるなんて欠片たりとも考えていないのだろう。まあ、それに大して抗うこともなく腕の中に納まる私も相当趣味が悪いと思いながら、身を任せた。
※バカップル第二弾。どうした、私。