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※ちょっとしたお話

【034:ホーム】8:18 2007/07/23

もう165時間だ。
おおよそ一週間。それだけの日数を経て、ようやく自宅に帰ろうとしている。
出張とはいえ、一週間は長い。それだけの長逗留をして、得たものは少なく全くもって割りに合わない。そもそもこの仕事は私自身が行くような代物ではない。もともと別の検事が行く予定だったのが、急な用事――それこそふざけてると思うがトモダチとの旅行だそうだ――で行けなくなったということだった。それでお鉢が回ってきたわけだが、結果として疲労だけが増えただけだった。
特急電車から降りて、少しベンチに座り込んだ。新幹線と違って座り心地は悪いだ。運転も些か荒っぽい。しかも同じ車両内に酔っ払いが居り、ほとんど寝ることも出来なかった。仕方なく食事を取ろうとしたら駅弁は既に売り切れだった。本当に、最悪だ。
鉄板が入ったような背中を無理に伸ばして、コキコキと首を鳴らす。
時間は既に遅く、ホームにいる人間も疎らになっている。
とりあえず乗り換えのために階段を上る。これから検事局に行っても居るのは警備員だけだ。しかし、明日の貴重な休みのことを考えると今日中に済ませておきたかった。アタッシュケースの中には証拠品と関連の書類が一式揃っている。大体の体裁は整えてあり、後は決済印を貰うだけというところまで作ってある。警備員だろうがなんだろうが預けておけば、受け取った検事が勝手に処理してくれるだろう。
アナウンスが流れて、やたら眩しいヘッドライト共に電車がホームに滑り込む。開いた扉に身体を運び、ガラガラの座席に腰を下ろした。

案の定、担当検事は既に帰っていた。
私は警備員に書類と証拠品を手渡し、今居る検事にでも渡してくれと言付けた。これでどうにかなるだろう。
駐車場に降りて、置きっ放しだった車に乗り込んだ。鞄を助手席に放り投げ、エンジンを掛ける。緩やかな振動とタービンの回る重低音が心地良い。後は、帰るだけだ。
手馴れた動作を繰り返し、私は車を発進させた。

郊外のマンションは車が無いと酷く不便に思う。
脇の入り口から車を入れて、地下の駐車場に停めた。駐輪場に停めてある自転車を見て、フッと笑った。いつもなら几帳面に停められたピストが、今日は幾らか乱暴に停められている。持ち主に許可を得ずに使うのは一人しか居ない。
顔を思い浮かべると、急に逢いたくなった。
こんなところだけ似てきたものだと私は苦笑する。しかしソレも含めてあの男の存在が自分にとって大事なのだから仕方ない。
私は足を早めて、階段を駆け上がった。

※続きを書く気力がないよ。