【023:ネクタイ】22:05 2007/07/10 「なるほど君のネクタイってさ」 いつも同じだよねー、と真宵ちゃんが頬杖をつきながらぼやく。 僕は読みかけの書類から思わず顔を上げて、真宵ちゃんを見た。 「うーん、色が同じだけで柄とか微妙に違うんだけどなあ」 「色が同じってのが問題なのっ」 真宵ちゃん曰く、いつも僕が着ている服が同じ色調なのでいい加減見飽きたらしい。 「他の色のネクタイとか買わないの?」 「仕方ないだろ、この色気に入ってるんだから」 「もっとバリエーション増やそうよ。スーツが青だから爽やかに水色とかさ、チェック柄とか可愛いのいっぱいあるよ?」 「可愛さなんて必要ないよ」 「えーっ、だからなるほど君モテないんだよ」 真宵ちゃんの一言に心が抉られるような思いに浸りながら、僕は気を取り直して書類を読み直す。 明日の公判に備えて、どうにか形だけでも整えなければならない。 「そういえば明日の裁判ってミツルギ検事だっけ?」 「いや、途中で替わったよ。ええと、確かアウチ検事だったかな」 「ふーん、じゃあ楽勝だね」 「そんなわけないだろ。今回、結構ヤバいんだから」 「大丈夫だよ、なるほど君は危ない橋を渡りなれてるんだから」 「……褒めてないよ、真宵ちゃん」 17時のチャイムが時計から奏でられる。 真宵ちゃんはトノサマンスペシャルがやるんだとテレビの前へと戻っていった。 やれやれ、と僕はネクタイを幾らか緩めた。 確かに言われてみればこのネクタイも幾らか草臥れてきたかもしれない。そろそろ換え時かなあと考える。最近では依頼もポツポツと飛び込んで、どうにかこうにか生計も立ってきた。真宵ちゃんにも給料を払えるようになったし。今度の日曜にでも見に行くか、とつらつら考えてみる。 「なるほど君」 「うん?」 「ネクタイさ、今度一緒に見に行こうよ。あたし選んであげるから」 ソファに凭れながらニコニコ笑う真宵ちゃんに僕は小さく苦笑して、分かったよ、と両手を挙げた。 ※ナルマヨ。肴は兄にピンクのネクタイをプレゼントしたことがあります。そして自分用はグレーを購入。間違ってるよ |