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※ちょっとしたお話

【010:チェーン】22:16 2007/06/20

今日一日は休暇を申請していた。
当然それは受理されて、私はゆったりとした休日を過ごしていた。はずだった。
嫌味なほど鳴り響く携帯電話の着信音。
私は眉を顰めて、通話ボタンを押した。
「もしもし、私だ」
「すまねッス。糸鋸ッス」
無駄に大きい声が耳に飛び込む。思わず電話を遠ざけて、声が止むのを待った。
「大変申し訳ねえッスが、事件ッス」
私は深く溜息を吐いて事件の概要を聞いた。

「あれ、御剣。今日休みって言ってなかったっけ?」
着替え始める私に成歩堂が声を掛けてくる。
あちらはまだ寝惚け眼でベッドに横たわっている。
昼も過ぎているのにどうしようもないヤツだ、と私は思った。
「仕事だ。急な連絡が入った」
「イトノコさん?」
「ああ」
「まあ仕方ないよね。いってらっしゃい」
「キミはどうするつもりだ」
「んー、半端な時間だからね。適当に掃除でもしておくよ」
「すまないな」
「良いって、良いって」
ヒラヒラと手を振りながら成歩堂がごそごそ動き出す。
「みぬきも居ないしなー。オドロキ君でも呼んで大掃除かなあ」
「……賛成しかねるな。そもそも彼にちゃんとした仕事をさせてるのか?」
「やだなあ。ちゃんとトイレ掃除の極意を一から伝授してあるよ」
「そうではなくて弁護士なのだろう、彼は。本業はどうした」
「ああ、ソレね。えーと、まあ自分で見つけてくるんじゃないかな多分」
「キサマというヤツは」
「何、惚れ直した?」
「阿呆。期待した私が馬鹿だった」
あはは、と成歩堂が笑っている。私は脱力したが、とりあえず現場に向かわねばならない。
「まあいい。とにかく行ってくる」
「あ、御剣」
「何だ」
「お出かけのキスくらいやんないと」
「馬鹿を言うのも大概にしとけ、馬鹿者」
何だかんだ言いながらゆっくりと近づいてきた成歩堂の腕をかわすことの出来ない自分がいる。
「みぬきがいるとなかなか出来ないんだしさ」
「この嘘吐きが」
毒吐きながら、唇を重ねた。
私は目の前の男に翻弄されている。だが、それも半分以上は望んでいるのだから仕方ないことだ。

※4の二人。なんかもうバカップル。タイトルは『縛る』という方の意味です。