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※ちょっとしたお話

【002:プロフェッショナル】8:17 2007/06/27

「キサマ、何のつもりだッ」
「おうよ、オレ様プロだからな」
成歩堂法律事務所は今日も今日とて騒がしい。大半の理由として矢張という男の存在だと真宵ちゃんはぼやく。僕としても似たような意見だから何も言わない。というか、その男に真っ向から立ち向かう御剣の方がどうかしてる。どうせ話半分にしか話さないような男の言い分に付き合って何が楽しいのだろう。
「何だか会話が成り立ってないね、ミツルギ検事」
「まあいつものことだよ、真宵ちゃん」
僕らはげんなりと応接間を陣取る二人を見ている。
会話の中心はつまり、何と言うか、矢張が持ってきたその本に尽きる。
「って言うか、ホントに描いてたんだねヤッパリさん」
「僕は正直信じたくなかったよ」
矢張がニコニコと笑いながら事務所にやってきたのは勿論その本のことについてだった。どうやら絵本第二弾の企画が決まったようだ。
良かったな、と僕は言った。真宵ちゃんが、とうとうプロですね、と言いながらお茶を出した。とっくにプロよオレ様、と矢張はふんぞり返って笑っている。
たまたま事務所に来ていた御剣も笑っていたが、ソレを見て固まった。
固まって、少し落ち着いたのか笑い出す。あまりの珍しさに僕と真宵ちゃんは何事かと手を止めた。
「前がメイちゃんだったからよ、今回はオマエにしたぜ御剣ぃ」
ぐっ、と親指を立てた矢張はそれはもう笑顔だった。

「矢張、キサマ覚悟は出来てるんだろうな」
御剣の表情は禍々しい顔だった。真宵ちゃんが、ひっ、と咽喉を鳴らしたのも仕方ないだろう。眉間に皺――もとい、ヒビが入ってるようなそれはもう子供が見たら泣き出すどころかトラウマになるような凶悪な表情になっている。篭った笑い声がそれこそ地の底から湧き出るような低い声で、対する男を眦を吊り上げて睨んでいた。
怖い。僕は真剣にそう思った。
しかし矢張はニコニコと笑っているばかりで、『今回のは会心作』と息巻いている。御剣の反応があまりにオソロしいことになっていることにも気付いていないようだ。僕は矢張の図太さに感心し、御剣の反応が怖くて、顔も見れない。
「なあ成歩堂、コレどうよ。売れるに決まってるよな。俺の会心作だしよ?」
「へ?」
急に振られて、僕は間の抜けた声を出す。内心では『僕が知るかッ』と怒鳴っていたが、御剣が急に振り返って僕を睨んだので声が詰まった。視線が痛いほど突き刺さる。怖い怖い怖い。
「な、なるほど君。こ、こ、怖いよ、ミツルギ検事っ」
「うん、あまり見ないほうがいいかもね」
僕は額に浮かぶ汗を拭いながら、真宵ちゃんにそう言った。

※矢張第二弾の絵本はミツルギが主役。デフォルメが気に入らない様子